異変はそれから10分ほど経ったときに現れた。


朔羅は手を顔の前でひらひらさせて、「暑い」とこぼした。


そっかぁ?いくら人数が多いと言え、暑がりの俺だって丁度いい温度だ。


川上なんて寒かったのか、冷房の当たらない場所まで移動していったぐらいだ。


響輔がびくりと肩を揺らして、


「戒さん。一時休戦や。お嬢連れて帰ってください」と切羽詰まったように俺を見る。


「はぁ?今から?」


「いいから!」


有無を言わさない強い口調に俺も若干たじろぎながらも腰を上げようとした。


朔羅の方を見ると―――




あいつは隣の一ノ瀬の顔を挟んで、頬にキスをしていた。


「ーーーー!!!?」


声にならない声を上げて、一ノ瀬が真っ赤になる。


わ゛ーーーー!!お前何やってんだよ!!


響輔もびっくりしたように目を丸め、


川上は「どーしたの!?」と驚きの声を上げた。


「あ、姐さん大丈夫ですか?気でも狂ったんじゃ」とすぐ向かい側にいる進藤が心配の声を掛けると、朔羅は何を思ったのか、


「何だよ。おめぇもしてほしいのか??」なんて言って立ち上がる。


白い頬が僅かに色づいていて、潤んだ目を上目遣いに上げてる。


な、何だよ!!その色っぽい顔は!!!