朔羅さん―――


キョウスケに初めて名前を呼ばれた。


「朔羅さんのこと―――」


あのあとキョウスケは何を続けたかったの?


いくら鈍感なあたしでも、何となく―――勘付くよ。


だからさっきはあんなに機嫌が悪かったんだ。


ねぇ……いつから?


いつからあたしのことを―――?


キョウスケは好きな人が居るって言ってた。


いつもさりげなく隣に居て、いつも支えてくれる。助けてくれる。


向けられる視線はいつも穏やかで、いつだって優しさに満ち溢れていた。


だから停電の夜にキョウスケがキスしてきたって気付いても―――


怖いとは―――思わなかった。




でもこれで確信した。



やっぱりあのときのキスは、キョウスケだったんだね。





戒は―――きっと知ってるよね………いや、キスのことじゃなく、キョウスケの気持ちに。


知ってたから、あんな風に見えない攻撃し合ってたんだね、二人とも…





キョウスケがあたしのことを―――





キョウスケのことは嫌いじゃないよ。むしろ好きなぐらい。


でもそれは男としてじゃなくて、身内として、人間として―――


でもそれはキョウスケの望む“好き”じゃない。


同じものを返せるのはあたしじゃなく―――


あたしの脳裏にふっとリコの笑顔が蘇った。


一人ならまだしも、二人目も……なんて、あたし今度こそリコに顔向けできない。




あたし


どうすればいいんだろう……


先を行くキョウスケの細い背中を見つめながら、そんなことを考えていると



ふと強い視線を感じた。




!?