みんな時が止まったように目を開いて、あるいは丸めてその場で固まっていた。
え…ぇえーーーー!!
もしかして見られてた!
「朔羅ってば大胆~、でもイチャつくときは二人きりにしてね」とリコが真っ赤になってちょっと笑う。
キモ金髪野郎は「うぉお!姐さんやりますね!!さっすが極道のお嬢♪」なんて言って興奮(?)してるし、
わ゛~~~!!やっぱ見られてたのね!
違った意味で興奮してるのは千里。
「龍崎ーーーー!!!」
マイクを通して大声で叫ぶと、部屋中がその声で振動するかのような大音量にあたしたちは思わず耳を塞いだ。
戒はへらっと笑うと、「わりぃわりぃ。だってすぐ近くに朔羅の顔があったから」なんてさらりと言ってる。
よく言うじゃねぇか。『何で山に登るのか?』と聞かれると、『そこに山があるから』なんて答えるやつ。
まるでそんな調子で当然のごとく、
近くに朔羅の唇があったから。なんて感じだ。
あたしは無反応のキョウスケの顔をそろりと窺うと、
キョウスケは無表情であたしたち二人をじっと真正面から見据えていた。
不機嫌そう……には見えないけど、
どことな~く、負のオーラを背負っているような…
キョウスケはタッチパネルリモコンをリコに手渡すと、
「すんまへん。ちょっとトイレ…」と言って立ち上がり、部屋を出て行ってしまった。
「「「………」」」
場がしんと静まり帰る中、
「あちゃ~…ありゃ完全響ちゃん怒らせちゃったな」
戒は全然反省していない軽い口調で言って、キョウスケの背中を見送っていた。



