な、何でそんなに怒ってんだよ……
キョウスケの迫力のある睨みは、あたしじゃなく戒に向けられていた。
戒は飄々とした態度で腕をソファの背もたれに置いて、脚を組んでいる。
千里はまだ口の中でぶつぶつ言ってるし、キモ金髪野郎は「ラブラブですね♪」なんてKYなことを。
お前…この状況見て“ラブラブ”って言うか?
あーもぉ…せっかく楽しくなりそうな雰囲気だったのにぃ(泣)
「ねね、響輔さんと龍崎くんて喧嘩でもしてるの?」
と、さすがにこの険悪な雰囲気を悟ったのかリコがこそっとあたしの隣に来て、小声で喋りかけてくる。
「さぁ…本人たちは喧嘩じゃないって言ってるけど。それにさっきまで結構楽しそうだったし…」
あたしもそれに小声で返した。
野郎二人の考えてることなんてあたしには分かんねぇよ。
ちょっとため息を吐くと、隣ではリコが「ふぅん」と頷きながらカクテルの入ったグラスに口を付けている。
「ねぇそれおいしい?」
気になってたこと聞いてみた。
「うん♪甘くておいしいよ☆朔羅も飲む?」
「いや…酒は止められてるから」とちらりとキョウスケを上目遣いで見ると、
「だめですよ」としっかり釘をさされちまった。
「何だよ、ちょっとぐらいいいじゃねぇか。中学生でもあるまいし」と戒が不服そうに眉間に皺を寄せる。
だけどすかさず
「ダメです」
キョウスケのドスを効かせた声を聞いて、あたしは身を固くした。



