恥ずかしいのは最初だけで歌詞に感情移入していると、思った以上にちゃんと歌える。
戒とあたしは隣り合って顔を合わせて歌った。
やっぱこいつ……
闘うときもだけど―――三味線のときも、歌うときでさえ二人の息がぴったり合う。
やりやすい。
戒が自分のパートを意味深な歌詞をあたしの耳元で囁くように歌った。
くすぐるような甘くて低い声がすぐ近くで聞こえて、あたしの体に電流のような痺れが走る。
わわ!緊張するけど、なんか嬉しい。
歌詞は男女のすれ違いの悲しいものだったけれど、それでも戒があたしの肩に手を回し引き寄せながら歌うその様子に、歌詞のような結末がこない気って確信が持てた。
~♪…
曲が終わり、無事歌え終えたことにほっとしながら戒を見ると、戒は無言であたしを背後から抱きすくめてきた。
りこは「わ!わ~!♪」と嬉しそうに顔を覆って、キモ金髪野郎は口笛を吹いていた。
「お前やっぱ歌うまいな。歌いやすい」
戒の声が耳元で囁いて、あたしは緊張して体を強張らせた。
「いつまでくっついてんだよ!」
あたしを抱きしめる戒を、千里が引き剥がして……
ってか毎度おなじみのパターン??
そんでもってキョウスケがどこか不機嫌―――
どわぁああ
不機嫌通り越して、まるで仁王さまみたいな顔になってるよ~~~!!



