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稲葉さん降臨!?ってほどの歌声に惚れ惚れしてると、
「そりゃ毎週のようにカラオケ付き合わされてたらいやでも上手くなるわな」
と歌い終わった戒。
毎週のように失恋してたのかよ、お前のにーちゃんたちは!?
何か…あたしホントに戒がきてくれて良かったぁ。
その後もカラオケは盛り上がって、30分も経つと場が乱れ始めた。
戒はいつのまにかキョウスケの隣に移動してたし、あたしはリコとデュエットが多かったから二人並んで座っていたし、キモ金髪野郎は立ち上がってタンバリンを鳴らしていた。
唯一テンションが低いのは―――千里。
「どーしたんだよ」あたしが聞くと、
「いや。せっかく朔羅と一緒だって言うのに、二人きりになれねぇなって思ってただけ」
ふ、二人きり!!
「だって俺は龍崎みたいに一つ屋根の下ってわけじゃないし、お前遊びに誘ってもバイトだとか何とか言って断ってばっかじゃん」
う゛…確かに…
夏休みが入って千里には色々遊びに誘われた。
殆どがバイトだったけど、ほんの少し……避けてた部分はある。
「せっかく親父からプールのただ券貰ったのに」と千里は、と息を吐いた。
「いや。それは戒であってもいかないし…」
「朔羅って恥ずかしがりや?♪水着で龍崎くんを悩殺しちゃえ!」とリコが、楽しそうに口の前で手を組んだ。
の、悩殺!!?
いやいや…あたしは恥ずかしがりでも何でもなく…
胸に彫った紋を見られるわけにはいかないから―――



