「だけど厄介なヤツがいましてね」


ため息を吐きながらキョウスケは一枚の名刺を取り出した。


その名刺をあたしと戒で覗き込む。


名刺には『税理士:大狼 恵一』と書かれていた。


「おおおおかみ?」


「たいろうじゃね?ふぅん…税理士ねぇ」


二人して首を捻っていると、


「これでタイガって言うらしいんです。この男、色んな意味で厄介ですね」と疲れを滲ませた顔で大きなため息を吐く。


その様子から疲れ切っているのがまざまざと分かった。


一方戒の方は―――


「わりぃ。俺の方は収穫ゼロ。やっぱあの変態野郎は無理だワ」とぐったりしながらさりげなくあたしの膝に頭を乗せてくる。


ひ、膝枕!!?


しかも


「朔羅さん、僕疲れちゃったぁ」なんてヒツジちゃん戒の声で頬をすりすり。


そんな可愛い声で甘えられると、とことん弱い。


戒の白地にグレーのストライプをあしらったちょっと洒落たデザインのシャツが捲くりあがっていて、引き締まった腹が見える。


腰で履いたジーンズから、ちょっとだけパンツのラインが覗いていた。おっしゃれ~な、なんかブランドのロゴが入ったボクサータイプのパンツ。


パンツ!?


わわっ!目のやり場がっ!!あたしは慌ててそこから顔を逸らすと、キョウスケが戒のシャツをちょっと直した。


「変態露出狂。お嬢が困ってるじゃないですか」


「はぁ?俺がいつ露出したよ」って気づいてないし……


ま、いいけどね…


そいやぁ叔父貴もパンツが欲しいとかほざいてたな……って、あたしの周りも何気に変態が多いんじゃね!?