「どーしたもこうしたもねぇ。何もんかが、トイレに悪戯しやがった。床のセンサーは修理がバカ高い上、修理に時間もかかるって言うのに!」
叔父貴が苛々とこめかみを掻いて、あたしは思わず俯いた。
そーだったんだ……知らなかったとは言え、ごめんなさいぃ
心の中で謝ったけれど、はて??あの二人は知ってたのかな?
『どーせやるなら派手にやろうぜ♪』
なんて、昨夜わくわくしたように作戦を立てていた戒。
間違いねぇ……確信犯だな…
あたしはそ知らぬ顔で紅茶を啜った。
叔父貴もすっかりぬるくなったコーヒーに一口、口をつけ自分のペースを取り戻したのか背もたれに腕を乗せた。
「悪い。話が途中だったな。進路相談だったが、どこの学校に行きたいとか具体的に決まってるのか?」
「え?……ううん。そこまでは…。ただ、漠然とそんな風に考えてただけで……」
「そうか。お前が行きたそうなところの資料を取り寄せておくとしよう」
満足そうに言って叔父貴はちょっと笑った。
「んなことしなくていいよぉ。気持ちは嬉しいけど、それぐらいだったら自分でできるし」
恥ずかしそうに返して、あたしは目の前の叔父貴を見た。
叔父貴も同じだけ笑顔を向けてくると思ったのに、叔父貴はちょっと寂しそうな影を浮かべただけだった。
手の中のカップを見下ろしながら目を伏せて―――それでも口元にはかすかな笑みを湛えている。
「そうやって、お前はいつの間にか俺の助けなんて必要なくなっていくんだな」
嬉しいような、寂しいような。
娘が居たらこんな気持ちなのだろうか―――
叔父貴はそう締めくくった。



