「お前の特技は料理だけじゃないと思うぞ?」
叔父貴は穏やかに笑いかけてきた。
「他に何がある?」
何となく聞いてみると、叔父貴は腕を組み、う゛~~~ん……と真剣に考え込んだ。
「やっぱないじゃん!」
あたしが勢い込むと、叔父貴はちょっと声を上げて笑い、
「ははっ!悪い、悪い」なんて言ってあたしの頭を撫で撫で。
叔父貴の撫で撫では、戒の手と大きさも温度も違う。
叔父貴の手の方が大きくて、骨ばっているし、温度が少しだけ低い。
戒の指はびっくりするほどきれいで、思った以上に熱い手をしている。
どちらがいいか、なんて比べるものじゃない。
二人の違った感触を思い浮かべて、あたしは複雑な表情を浮かべた。
でも二人ともその手付きはいつもとっても優しいんだ。
まるで包まれてるような、居心地の良さに―――色んなわだかまりや不安が消えていくよう……
ビーッ!ビーッ!!
突如、けたまましい警報機が部屋中に鳴り響いた。
「何ごとだ」
叔父貴があまり焦った様子を見せずに一言呟いて、腰を上げた。
ジャスト10分。
緊張した面持ちで腕時計を見下ろして、叔父貴が「悪いがちょっと待っていてくれ」と席を外すその姿をきっちり見送り、
あたしも慌ててソファから立ち上がった。



