目的は鴇田の診察室じゃない。


あいつが受け持った患者のデータを入手することだ。


カルテなんて言う書類上のものは総合カウンターや受付なんかで管理されてると思うけど、必ずパソコン上でも残してあるはず。


狙うはそのパソコンを一括管理しているサーバールームだ。


どの企業にもサーバールームは必ずある。もちろんこの病院でも―――だ。


そのサーバールームの場所は昨夜響輔に調べさせた。


階段で2階に上がって、一番奥の部屋がサーバールームになっている。


その場所には難なく到着した。古くていかめしい扉は旧式の鍵がかかっていて、鍵穴が空いている。


何気ない素振りで周りを見渡し壁に身を寄せ、監視カメラの死角に入ると俺はドアと壁の僅かな隙間にナイフを差し込んだ。


もっと難しいセキュリティだったら厄介だけど、これなら簡単に開けられそうだ。


助かったぜ。


僅かに力を入れてナイフを持ち上げると、カチャッと


ものの数秒であっけなく錠が外れる音がする。


って言うか無用心だな。こんな簡単に開いていいのかよ。


ま、俺は助かったが。


なんて思いながらも俺は室内に入り込み、鍵をきちんと掛けた。


十畳程のさほど大きくない部屋の中に、たくさんの機材がラックに積んである。


その中の一台―――大きなデスクトップ型のパソコンが青白い光を放って起動していた。


モニター画面に、たくさんのフォルダが並んでいて、その中の一つ“個人情報”の項目を目にすると俺はUSBメモリを本体に繋げた。


データを全部コピーするつもりだ。


ここは総合病院だ。外科、内科に始まって耳鼻科や歯科も入っている。


どんな健康な人間だろうと、必ず何らかの医療施術は受けてるはず。


イチがDr.鴇田と何らかの繋がりがあるのなら、情報も必ずある筈だ。