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御園医院に向かい、総合受付のカウンターで、俺は事務員の女に尋ねた。


「内科の鴇田先生と約束してるんですが♪」


秘儀!!爽やかスマイル!をかますと、


「鴇田先生だったら、診療中だと思うわよ~」と、疑いもなく事務員の女はにこにこ答えてくれた。


「診察室の前で待ってても?」と聞くと、


「ええ、大丈夫だと思うわ」とにっこり頷く。


事務員は俺の演技にすっかり騙されたようで、


「この間胃炎で運び込まれてきた子よねぇ。あれ以来おなかは大丈夫??」なんて聞いてくる。


「はい~♪おかげさまですっかり」


俺のこと覚えていやがったのか。


ま、入院した直後に姿をくらませば騒ぎになるのも当然か。


今日はあのときのように襲われる心配もないし、万が一奇襲にあったとしても対抗する自信はある。


「今日はまたどこか痛いの?顔色は…悪くなさそうだけど」


「心の病気なんです。ドキドキして夜も眠れなくて……」


俺がしおらしく胸を抑えると、


「あらぁ」っと事務員は心配そうに…だけど、ちょっと面白そうに頬を緩ませた。


俺は「ありがとうございます」と可愛らしく礼を言って、その場を離れた。






チョロいぜ。


事務員に背を向けながら「へっ」と俺はちょっと笑った。