あたしはゴクリと喉を鳴らした。


「目的は戒の拉致?」


「それか脅しか。俺たちが奴らにとって何か都合の悪いことに近付き過ぎた。これ以上深入りするな、ってことを伝えたかったのかもしれません」


「都合の悪いこと……」


あたしも腕を組んでうーん…と唸った。


青龍と白虎が盃を交わすと、都合の悪い連中…


「玄武か、朱雀?」しか思い当たらない。「それに、戒が東京に戻ってきたってことはまた狙われる可能性はあるってこと!?」


あたしとキョウスケの会話を、腕を組んでただ黙って聞いていた戒が険しい顔で正面を向いた。


淡い紅茶色の瞳の中に、LED電球の明りが反射して金色の線を描いていた。


細くなった瞳孔がまるで―――虎の……目に見える。





「いや、それはないな」





静かに言い放った言葉は、威力を感じた。


キョウスケもそれに賛同するように、黙ってビールのグラスに口を付けた。


あたしだけが、一人置いてきぼりを喰らったように感じる。


ってか、頭わりぃんだよね。結局は…トホホ


「何でそう思うんだ?」


戒は机の上に片肘を付くと、あたしをまっすぐに見据えてきた。


揺るぎのない視線に、ドキリと心臓が跳ねる。






「おかんが俺を東京に帰したことが何よりの証拠だ」