「ま、まぁまぁ…あんまり緊迫してるのもどうかと思いますから、きっとお嬢は場を和ませてくれたんですよ」


とキョウスケが優しいお言葉。


キョウスケ…おめぇいいヤツだなぁ。


じーん…と目を潤ませて、ついでに「“しさ”の意味教えて」って頼んだけど、


「それはご自分で調べてください」とキッパリ…。クスン…冷たい…。


しょうがないから自分でぺらぺらと辞書を捲っていると、


「しょーがねぇヤツだな。ほれ、貸してみ」と言って戒が辞書を奪っていった。


ほらよ、とページをめくって寄越してくれた場所には…



“[名](スル)《「じさ」とも》それとなく知らせること。ほのめかすこと。「―に富む談話」「法改正の可能性を―する」”


と書いてあった。


「ふーん…ほのめかすって意味かぁ。勉強になったぜ」


あたしが辞書を覗き込んでると、戒が顔を寄せてきて、


「おめぇは素直で可愛いな♪」なんて言い、「よちよち」って言いながら頭を撫で撫で。


「ガキじゃねんだぞ!」


そう勢い込んだところを、


「幽霊みたいって言ってましたけど、どうしてそう思ったんですか?」


とキョウスケの冷静な突っ込みが入った。


あたしははっとなって戒の手から逃れると、


「ただでさえ薄気味悪い歌歌ってんのに、そいつが着てたのが真っ白な着物で、おまけに肌も死人みてぇに真っ白。爪の先と唇だけが妙に赤くて、………人形みてぇだった」


そのことを思い出すと、今でもあの女の笑い声が耳に蘇り、


あたしはぎゅっと両肩を抱いた。