「蝉はさ……」
角を曲がったところにコインパーキングがあって、その道に差し掛かった頃叔父貴が唐突に口を開いた。
「………何?」
「一週間しか生きられない生き物だ」
「そんなこと知ってるよぉ」
「たった一週間……
あいつらは死ぬ間際まで一生懸命だよな」
何を今更、と言って笑い返したけど、叔父貴があたしを見下ろしてくるその表情は
悲しそうな、寂しそうな複雑な表情で、切なげにゆらゆらと揺らいでいた。
あたしはそれが一瞬見間違いだと思った。
陽炎が叔父貴の顔を奇妙に屈折させてるのか―――と。
でも違った。
叔父貴の…あたしの手を握る手に力が抜けた。
雨のように鳴き響く蝉時雨の音を聞きながら、
あたしはその手を慌てて握り返した。
「おじ……」と言いかけたとき、
「よぉ。イケメン兄ちゃん。火(ライターのこと)貸してくんね?」と声がして、あたしたちは揃ってその声をした方に目を向けた。



