「ほらよ。もう大丈夫だ」
そう言ってにっこり笑う叔父貴。
お、男らしい~~~!!
あたしは虫がダメだから、こうゆうことされるとキュン♪とくるんだよね。
だけどゴキブリが同じように死んでると、ぶっ倒れそうに顔色悪くするくせにね♪
そういや戒も結構平気だっけな。蝉の抜け殻を目の前に突き出されたときはさすがにビビったけど。
(※。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅰ・*・。。*・。参照)
それでもどこからか、蝉が落ちてこないかあたしはびくびく。
そんなあたしを横目で見ると叔父貴は涼しく笑った。
「そんなにきょろきょろしてると危ねぇぞ」
そう言ってさりげなくあたしの手を握ってくる。
ドキン!
あたしの心臓がまた大きく跳ねた。
叔父貴はあたしの手を握ったまま歩き出した。あたしもつられてその横を歩く。
叔父貴のゆっくりとした足取りが、あたしの歩調に合って
アスファルトに落ちた影が、どこまでも寄り添って伸びていた。
よく考えたら叔父貴とこんな風に隣り合って二人で歩くのは珍しいことで…
恥ずかしいような、嬉しいような…複雑な気持ちになる。
そんなことを考えていたからあたしはまた黙り込んで、叔父貴も何かを話しかけてくることはなかった。
黙って手を繋いで歩くこの道のりが
もっともっと先まで続くといいな。
心の中で芽生えた小さな気持ちが―――あたしをさらに複雑な心境へと追いやった。



