渋滞を抜けると、その後は割りとスムーズに走ることができた。


見慣れた景色が目に入り、青龍会本部が近づいていることが分かる。


叔父貴はその手前で車を止めると、


「花屋に寄っていいか?百合香の墓に供えるもん買っていこう」と言ってすぐ近くのコインパーキングを指し示した。


ってか叔父貴ってこうゆうところ律儀だよな。戒なら「路駐でいいじゃねぇか」って突っ込み入れそう。


そう言うわけで、叔父貴はコインパーキングに車を入れると、あたしたちは揃って歩き出した。


頭上に上がった太陽が眩しい。


暑さはピークだったけれど、並木道に連なる木々から蝉の鳴き声を聞いて、少しだけ清涼感を感じた。


花屋のきれいなお姉さんに、百合の花束を作ってもらうと、あたしたちは来た道を帰る。


途中、歩道に蝉の死体が転がってて、あたしは思わず飛びのいた。


「ぎゃ」


思わず叔父貴にしがみつくと、叔父貴は笑い声を漏らす。


「だってこいつら死んでると思ったら、死んだふりしてて急に動き出すんだもん」


戒みてぇだな。


戒ぜみ!


そう考えたら蝉も少しは可愛く見える……かも?


「死んだふりじゃなくて、瀕死の状態なんだよ。急に動き出すのは最後の力を振り絞ってるからだ」


叔父貴はそう言って、地面に屈んだ。


何するんだろう…


そう思って眺めていると、叔父貴はその死んだ(ふり?)の蝉を手でつまみあげた。


うげっ!


叔父貴の指でつままれた蝉は、やっぱり死んでなくて、激しい鳴き声を発し、叔父貴がそっと手を離すとバタバタと飛び去っていった。