「そ、そういやさ。何で急に青龍会本部に行こうって言い出したの?お盆には早いよ?」
「ああ。お前が行きたがってただろ?」
目の前の信号が青になって、叔父貴はアクセルを踏み込んだ。
再び流れ出す景色を背後に、あたしはちょっと目をまたたいた。
「何で?行きたがってたって知ってるの?」
叔父貴はちらりとあたしを見ると、にやりとニヒルに笑った。
ドキンと心臓が跳ねる。
違った意味でドキドキする。
「龍崎グループのメインサーバーに侵入しただろ?ハッキングしたのは戒か―――…響輔か……」
あたしはごくりと生唾を飲み込み、目を開いた。
ここまでバレてたら今更言い訳は嘘や通じない。
あたしは覚悟を決めた。
「………き、気づいてたの?どうして怒らなかったの?」
「気付いたのは俺じゃない。鴇田だ」
鴇田―――……
やっぱりあなどれねぇ奴だ……
「戒か響輔か。どっちにしろ見事なもんだったぞ?何せ俺は全く気付かなかったからな。僅かな痕跡を見つけ出した鴇田の方が一枚上手だったってことだが。もっと腕を磨けばサイバーテロになれるな」
なんて叔父貴はのんびり言う。
ちっとも痛手と思ってない感じで余裕がある。
「響輔だよ。あいつはサイバーテロなんて大それたことなんて考えてねぇよ。今回だってあたしが無理言って頼み込んだんだ」
だからあいつを怒らないで。と付け加えると、叔父貴はふっと笑った。



