叔父貴はハンドルを握りながらちょっと吐息を吐いた。
「お前、いつもそんな格好をしてるのか?ちょっと露出が多すぎじゃないか?」
あたしが想像したことと全く的外れな言葉が返って来て、あたしはまぬけな表情を浮かべて、それでも慌てて今日の服装を見た。
今日は黒地に細かいドット模様を浮かべた三段重ねのフリルキャミに、半そでの黒カーデ。
下は白の短いスカートだった。
「あ、うん。大体こんな感じだけど…」
「お前な。男は狼なんだぞ?そんなかっこしてると襲ってくださいって言ってるもんだ」
それ、戒にも言われました…
二人の思考ってよく似てンな。
ってか叔父貴、いつも通り?
「だぁいじょうぶだって。あたしに欲情する野郎なんてどこにもいねぇから」
あたしもいつもの調子を取り戻してカラカラ笑った。
そう考えたら、戒や雪斗は奇特だよなー。
「お前はもっと自覚を持て」
ピシャリとそう言われ、車が停止した。目の前の信号は赤信号だ。
叔父貴は片手をハンドルに乗せたまま、片腕を窓のサンに乗せ顔を逸らしている。
あぁやっぱり怒ってる…
シュンとうな垂れて、それでもあたしはスカートの裾をきゅっと握り、
「マサやタクたち組員はみんな可愛いって言ってくれたよ?あと、キョウスケも」
「お前が言わせたんじゃないか?」
「あたしどんだけ暴君よ」
思わずそう突っ込みを入れると、叔父貴は窓に向けていた顔をゆっくりと振り向かせた。
口元に淡い笑みを浮かべ、サングラスの奥の瞳の目尻は僅かに下がっていた。
「嘘だ。すっげぇ似合ってる。可愛いよ、朔羅」