戒は小さくため息をついて、考えるように腕を組んだ。
「そいやぁ今日はいつもセットになってる鴇田がいねぇな」
「叔父貴は今日オフって言ってた。蛇田は仕事じゃね?そういつも一緒に居るわけねぇよ」
と言いつつも、あたしもちょっとそのことは気になってた。
鴇田と―――見知らぬ女の言い争い。
そのあとあからさまに鴇田は取り乱してた。
あの女と何話したんだ―――?
あの女は何者?
このことは戒に話してない。何となく話しそびれちゃったし、そんなに大騒ぎする事柄でもなさそうだったから。
「とにかくあたし行って来るよ。偵察してくる」
「まぁお前のことだから止めたって行くんだろうけど」
戒は諦めたように目を細める。
「あいつがお前を危険にさらすってことはなさそうだけど、気をつけろよ」
「うん、ありがと」
きっちりそろえた膝の上に手を乗せて、あたしは戒に笑いかけた。
「お前……あいつの前でそんな顔するなよ!」
「は?何で」
「あいつが狼に変身したらどーすンだよ!!」
「お前じゃあるまいし、その心配だけはねぇよ」
あたしは呆れて戒を睨み上げる。
戒は整った細い眉を吊り上げて、くわっと目を開いた。
「お・前・は!!自分がどれだけ可愛くてイイ女なのかちゃんと自覚しろっ!!」



