「お待たせいたしました」
そう言ってケーキの皿とアイスコーヒーのグラスをテーブルに並べる。
その様子を物珍しそうに叔父貴がじっと見つめてきた。
き、緊張する……
皿を持つ指が僅かに震えて、あたしは皿をテーブルに置くと慌てて手を引っ込めようとした。
だけどその手を叔父貴が掴んだ。
強引じゃないけれど、力強い…大きな手。
ドキリ…と心臓が跳ねる。
サングラスを外した、叔父貴の切れ長の黒曜石のような瞳がじっとあたしを捉え、その目に吸い込まれそうだった。
「な、なんでしょうか!」
あたしの声はみっともなくひっくり返った。
叔父貴はふっと涼しく笑うと、あたしの手を掴んだままちょっとあたしの体を引き寄せた。
「今日俺はオフなんだ。お前はバイトいつ上がれる?」
低く囁かれて、あたしの体にぞくぞくっと何かが走る。
叔父貴の声は戒とは違った甘い色を滲ませていて、聞くものみんなを金縛りに合わせるような威力を持っている。
「え…えっと。今日は三時まで…」
「そっか。その後、都合はいいか?」
「え…うん。何もないけど」
まっすぐ帰って家で寝るだけ。戒は19時まで仕事だけど。
「なら少し付き合えよ。青龍会本部―――百合香の墓参りをしよう」



