戒はモテる。


元々美少年だし、あの爽やかスマイルと優しい声で女なんていちころだ。


でも本当は背中に刺青背負ってるし、声なんて3トーンぐらい低い。


見つめられるのも、睨まれるのも。


はんぱないぐらい、迫力あるし。


だけど裏も表も―――やっぱりすっげぇ優しいし、かっこいいことには変わりない。



嬉しい反面、あたしはやっぱり不安になる。


さっきみたいな可愛い子を毎日お客として見てたら、あたしなんてかすんじまうに決まってる。


戒がバイトを終わるまで何気なく壁に視線をやっていると、


“アルバイト募集!学生さん、未経験者大歓迎!!”と言う張り紙が目に飛び込んできた。


アルバイト……


そうか!その手があったか!!


あたしはぽんと手をついて、慌てて近くにいる男の店員さんを呼び寄せた。




――――

――


それから三十分もしないうちに私服に着替えた戒が現れた。


「待たせて悪りぃな」


「ううん♪」とあたしは上機嫌。


「何だよ、響輔と二人きりでそんなに楽しかったか?」と戒は不機嫌そうに眉間に皺を寄せた。


「あぁ、まぁ楽しかったっちゃ楽しかったけど…」と言いかけて、あたしは「ふふふ」と笑みを漏らした。


戒はそんなあたしを気持ち悪そうに見てたし、キョウスケはやれやれってな感じで肩をすくめていた。