しばらくの沈黙。


「昨日の…事…?」


先生は
言葉をたどるように言う。
星先生は
ソフト部の顧問の
中野目先生と
同じ年で
よく
話しているところを見る。
だから
知っていたのだろう。


「まぁ…はい。」
「中野目先生、心配してたぞ。」
「……。」


また涙が零れてくる。


「ぅっく…。」


声が出てしまう。


その時


―カラカラ―


キャスターの付いた
椅子を引きずる音。


ふと前を見ると
先生がすぐ側にいた。
そして
優しく私を包む。
先生のタバコのにおいがする。
「泣くな…。」
耳元で
先生の声がする。
びっくりし過ぎて
涙が止まる。


「…星先生…?」


「ごめん!」


勢いよく
離れて行った。


心臓が
口から出てきそうなほどの緊張。
顔は真っ赤だろう。
恐る恐る前を見ると
そこには
いつも通りの
無表情な先生。


「飲んだら帰れ…。」


えっ?


「は…はい…。」


一気にコーヒーを
飲み干し
勢いよく
化学準備室を
飛び出した。