恋わずらい



振り返る前に、
後ろからそう聞こえてきた。

…葵?


後ろに立っていたのは
見慣れない背の高い、
あたしと同じ制服を着た男の人。


悲しそうな目だった。

何かにすがるような。
何かをなくしたような。


そんな目で、彼はあたしを見つめて
掴んだ右手を離さなかった。