恋わずらい



俯いた彼は先輩の名前に少し反応して
ちらりとあたしの顔を盗み見た。


『知ってるの?葵』


どこか濁ったその瞳と目があったのは
二度目だった。

『…お世話になってる、先輩です』

『そっか』

それで会話は途切れてしまって、
間に少しの沈黙が流れる。


『あのさ』



沈黙を破ったのは彼だった。