恋わずらい



『最悪…』


思わずこぼれた本音を
彼の耳は聞き逃さなかった。

『…ごめんな、俺が呼び止めたりしたから』


『え?あ、いえ… 平気です』


じっと顔を見て気づいたけど
きっとこの人、先輩だ。
何となく見たことがある。

なぜあたしを呼び止めたのだろう。

葵って呼ばれたのって
まさかあたしを葵先輩と間違えた?


『…あの、もしかして
小野町 葵って人待ってるんですか?』