壁?
……抱き寄せ、られてる?

「上岡、落ち着け」

ギュッと押しつけられた井口の胸から、言葉が直接響いてくる。低い声が、振動となって、私に伝わる。

「いやいや、だったか?」
「いや、いやだったの、は、いぐち、でしょ!」
「……そうか」

長い溜息をつき、井口は肯定も否定もせずに、そっと私から身体を離した。
そばにあった体温が急に離れて、すっと寒い空気にさらされる。頬を伝った涙を、井口は痛そうな表情で見ていた。

「いいのか?」
「?」
「あと、二日……」

私はちょっとだけ考えた。
二日じゃいやだ。ずっとがいいよ。
でも、そんなわがまま言えるわけもなくて。

こくりと力強くうなづいた。