ふう、とわたしの弱点であるうなじに息をかけられた。すると体が面白いぐらいはねるのだから恥ずかしい。
「逃げちゃだーめ」
「……っ!」
思わず立ち上がろうとしたのに、吐息を吹きかけるような囁きによって敏感になりつつある体は従順な反応。
そして楽しげに耳をはむり、とかじられた。
これは、合図だ。
彼は必ずと言ってもいいぐらい、セックスの前に耳をかじる。
「ね、これはどんなカンジ?」
そう言って、彼は爪やすりをゆっくり動かした。
さっきまでは気持ち悪いとしか思わなかったのに、スイッチが入ってしまった体が、勝手に快感へとシフトした。
爪先から伝わる、微弱で、もどかしい振動。
それを間隔的に与えられつつ、時折指を撫でられ、唇が首筋のラインをたまにかする。
恥ずかしい。
いたずらにされるがまま、それを受け入れて反応してしまう自分が、とてつもなく。
「そんなアヒル口突き出しちゃって、我慢しなくてもいいのに……ハイ、終わりね」
爪やすりをテーブルに置いた彼。
だがこれで終わるわけがないとわかってて逃げようと体に力を入れたのに、彼はそれを難なくかわし、自然な動作でソファに押し倒された。
手首を捕らえられ、見慣れた天井と、にっこり笑顔の彼。
「運動して、お腹いっぱい空かそうね。そしたらレモンタルトももっともっと美味しくなるだろうから」
「~~っ。ばか。ばかばかばかばかばか」
相当の負けず嫌いであるわたしは、うらみがましい目で睨み、自由な足をバタバタさせてみたが、彼に喉をガブリ。
あぐあぐと喉を噛まれ、息をするのがほんの少し苦しくなって来て、足の動きが止まった。まるで肉食獣に息の根を止められた草食動物さながら。
満足げに笑い声をもらし、彼は自分の唇をペロリと舐めた。さりげない動作でさえ淫靡に映ってしまう。
彼の存在そのものが妖艶なのか、それとも、単にわたしが淫乱なのか、わからない。
「あは。やっぱりココ、いっぱいにして欲しいの?」


