ぽく、ぽく、ぽく、チーン。

アニメで使われそうな、あの微妙な間。あれを今おおいに使ってやりたくなった。

とりあえずだ。

「だったら自分でやればいいじゃない」

「あははっ。なにそれ新感覚オナニー? 斬新だね。マニア受けするよきっと!」


ケラケラと笑い出した彼をぶん殴りたくなったのは、もはや生理現象だと言っても過言ではない。

「そういえば、冷蔵庫に君の好きなレモンタルト作っておいたんだよねー」

彼の言葉に、わたしの怒りが急速に鎮まっていった。ああ、なんて単純なのだろう、わたしって。


「……馬鹿野郎」

「許してくれる?」

「やっぱぶん殴らせて。わたしの爪けずんのもレモンタルトも計算ずくなんでしょやっぱり」


「いやー。爪も呼吸してるって言うじゃん。だからなんとなくさ、性感あったりするかなあと気になって」

「……あんたの前で爪を切るの、もうやめよう」


楽しそうで、中身がつまってなさそうな声音で彼は話しつつも、爪やすりは着々と終わりへと向かって行って、自然と体の力を抜いてしまった。




「――ひぁっ!?」


彼は唐突に、でも絶対に計算ずくでわたしの首筋へキスして、指を撫でた。

それも、触れるか触れないかの、なんともやらしい触り方。


「ちょ、―――や、」