「か、かかかわ…っ!?」


いつもはわたしの十人並みのスタイルと顔を散々ネタにして、しかも密かに自慢のアヒル口もからかってくる彼の言葉に、わたしが言葉を返せないでいると、


「わざわざ休日の昼間から爪切りなんてさあ。しかも正午ジャスト。そんなに爪長いの気になるんだったら気がついた時にパパっと切っちゃえばいいのに。だからずっと伸ばしっぱなしで気持ち悪いんでしょ。ホント、パパっと切ればよかったのにねえ……朝でも夜でも」


にこやかなマシンガントークも、最後の言葉になればまたニヤリとからかいの色をたっぷり浮かばせた。

「し、仕方ないの!」

わたしは慌てて抗議するが彼に届かない。むしろニヤリが更にイラッとするものにかわった。


「いやー本当に可愛いよ。さすが俺の彼女。なんていうの、ギャップ萌え? 強がりなくせして迷信を信じるなんてさ」


機嫌よくまたコーヒーを飲む彼に、わたしの拳がわなわな震えた。

そう。わたしは迷信を信じ込んでしまうタイプなのだ。
絶対に夜に口笛を吹かないし、墓場の横を通るときは親指を隠す。

そして絶対に朝や夜に爪を切らない。早死にする、とか親の死に目にあえない、とか……縁起悪すぎ!


「まあまあ。そんな怒らず、機嫌なおしてよ」


いつもと同じように、クリームをすくって口に含むのかと思ったら、わたしの口へ塗りたくった。

そして間髪をいれずに彼の厭味になるぐらい整った顔が近付き、キスされた。