爪先の愛撫



ひときしり笑ったあと、彼は鎖骨の辺りをなぞった。


「また今度、キスマークの付け方教えてあげるね」
「やだ」
「なんでさ」
「引っ掻くから、いいの」
「え、えぇー……」


わたしはまたレモンタルトを食べる。


わたしの爪は指から少しはみ出る。

それが、わたしのこだわり。

なぜって?


それは、夢中に彼を引っ掻き抱きしめたいから。

わたしだけの彼だっていう、子供じみた独占欲のあらわれ。


それが、わたしなりのひねくれた愛情表現。



「じゃ、今夜はハードにいこっか」

「しね」


-end-