爪先の愛撫



「なわけないでしょ」

思ってたよりも弱い声がでてしまった。

ああ、そうですよ。
その通りですよコンチクショー。

言葉を出さないように、タルトを食べる手を進めてく。

またお菓子をこんなにドカ食いしちゃってさ、太るフラグしかないよねこれ。

こんなぽっちゃり女とするよりも、もっとグラマスなお姉さまとよろしくやってりゃいいじゃない。もう、ばか。


「ばかばかばかばかばか」

「途中から声に出してたの、自覚してる?」

「ぎゃーっ! なし! 今のなし! 聞かなかったことにして!」

「やっぱ嫉妬じゃん。俺が香水のにおいつけて帰った時はいつも背中引っ掻くよね、君」

「だから無しっつってんでしょオタンコナスー!」

「うふ。愛されちゃってるぅ、俺」

「黙って。お願いだから黙って!」

「やだね」

「な!」

「だって、俺ばっか好きなんだと思ってたし」


突然、ふざけてばかりだった彼の口調が変わって、思わず振り返る。

じっとわたしを見つめる真剣な瞳に、また顔中に熱が集まってきて、恥ずかしくて反らしたいのに、出来ない。