恋愛事情

∽真優花の過去8∽


あたしの知らないところで

何か
良くない事が起きている…

わけのわからない恐怖と
絶望的な気持ちに襲われた



お昼休み

あたしは、ひとりぼっちで
教室に居たくなかったから

人気のない校舎の片隅で
窓の外を眺めていた。

中庭では
男子がバスケをしている…


ふと、上の方を見ると

コの字型に建っている
校舎の向かいの窓で

手を振っている人が居る


「あれ…恵方堂くん?」


他に誰も居ないし…

もしかして
あたしに手を振ってるの?


試しに
小さく手を振ってみると

彼は
爽やかな笑顔で
何かジェスチャーをした。


「ん…?」


彼のジェスチャーが
読み取れず

大きく首を振ると

彼は突然
走り出した。


窓から見え隠れする
彼の姿を

あたしはドキドキしながら
眺めていた。


もしかして…
こっちに来るのかな…?


いくつもの窓を通過して
だんだん近付いて来る姿に

何故か鼓動が速まる…


やがて
角を曲がった彼の全身が

廊下の端に見えると…


あたしは

なんだか逃げ出したい気持ちになった。


こんな時に
美鈴の事、相談されても
ちゃんと答えられないよ…

正直
それどころじゃないし…



それでも

軽快な足取りで
彼は近付いて来る…


そして
あたしの前まで来ると

少し息を切らしながら
優しく微笑んだ。


『相澤さん、元気ないね?
何か…あったの?』


「え…」


あたしは正直、驚いた。

自分の事を聞かれるなんて
考えて無かったから…


やっぱり

クラスの中での
妙な雰囲気を

彼も
感じたのかもしれない…


『何か悩んでるのなら
俺でよければ相談のるよ?

あ!言いたくないなら
無理に言わなくていいけど

1人で悩むより誰かに話せば
少しはスッキリするかも
しれないよ?』


そんな風に言われて

思わず

彼の優しさに
甘えてしまいそうな

あたしがいた…