恋愛事情



なすすべもなく

呆然とするあたしを

抱えたまま


彼は歩き続け


公園らしき場所に
入って行く…




休日とはいえ

さすがに寒くなってきたし


人影は

まばらだけど…



ところどころに

無邪気に遊ぶ子ども達や


散歩してる風の親子連れの
姿が見えて



その視線が

気になって仕方ない…



恥ずかしくて

赤くなった顔を隠すために


思わず
彼の服をギュッと掴んで


その胸に顔を押しつけた…

「お願い。
もう下ろして」


「やだ。」


それだけ言うと、

また黙ったまま歩き出す。


サク、サク、カツン…と


時折、石を蹴るように歩く

彼の足音を聞きながら


あたしは、
なんとか冷静になろうと

深呼吸して


ゆっくりと顔を上げ

彼の顔を見た。



ちょっと、怒ってるような
顔に見える。



「どうして?

何か…怒っ…てる?」


あたしの言葉に

ようやく立ち止まると


彼はあたしの顔を
じっと見下ろした。



「…あのさー

真優花って…

俺の事、全然
信用してないだろ?」


「え…そんなこと…」


「だったら

どうして、何も
話してくれないわけ?

いつも、
ごまかしてばっかりでさ…

下ろしてほしかったら
ちゃんと、話せよ。」


「わ…悠斗っ…?

あたし…悠斗の事
ちゃんと信用してるよ?


たしかに…

自分の思ってる事
話すのは、苦手だけど…


これからは
頑張って話すから…

だから…下ろして…?」


「ふーん…

じゃ、さっそく
話してもらおっかなー?」


そう言って彼は

また少し歩くと



あたしの体を、
そっと下ろした…