あたしは




居間の戸の前で


開けるのをためらっていた



戸の向こうには、きっと

和野くんが立っている





そして彼は

この状況を


飲み込めずにいるはずだ…




大きく深呼吸して


開けようとした時




目の前の戸が



勝手に開いた…



え?




開けたのは


果倫ちゃんだった―




戸の前に立ち尽くしていた

和野くんと



ふいに目が合う…





嫌でも、さっきの事を

思い出してしまい…



お互い顔を真っ赤にして


俯いた



何か…

言わなきゃ…


気持ちばかりが焦って

言葉が見つからない…



ドキドキしながら

ふと見ると



和野くんの手に


あたしのポーチが

握られていた…



「あ…」


あたしの声に


和野くんが顔をあげる



「あ…これ…」


彼は

手に持ったポーチに

チラッと目をやり


そのまま

あたしに差し出した



「これって…あれ…

だよ…ね…?


もしかして…

果倫…が…そう…なの?」



果倫ちゃんが


あたしの手を

ギュッと握り


恥ずかしそうに

後ろに隠れる



あたしは

果倫ちゃんの手を

そっと握り返した


「…あのね、和野くん…

女の子の体の事…ちゃんと
…わかって…る…?」



和野くんは


ゴクリと唾を飲み


「え…と…

なんとなく…」



自信なさげに

それだけ言うと


黙り込んだ…