とある昼下がり、アリスという可愛らしい女の子が庭先の木の下で本を読んでいました。
「お姉様は面白いと言っていたけど……挿絵もない文字ばかりの本なんて退屈だわ」
勉強とは言え、難しいことばかり羅列する分厚い本にひたすら目を通すのは苦痛でしかありませんでした。
柔らかい陽射しが木の葉の間を抜けて、アリスに優しく降り注ぎます。
その心地好さに、ついアリスはウトウトと眠くなってしまいました。
そんなまどろみの中、近付いてくる小さな足音にアリスは気が付きます。
「誰かしら…………え?」
あるはずもない光景に、アリスは目を擦りました。
目を開けた彼女の前を走り過ぎていったのは、ベストを着て懐中時計を持って走る白い兎だったのです。
服を着て時計を持った兎なんて、世界中のどこを探せば見つかるでしょう。
それだけでも驚くアリスでしたが、更に不思議なことが起きました。
「ああ大変だ!遅刻してしまう!急がなければ!!」
なんと、時計と睨めっこをしながら喋り始めたではありませんか!
少しの間放心状態だったアリスですが、好奇心旺盛な彼女は読んでいた本を置いて
白い兎を追い掛けることにしました。
「待って!待ってよ兎さ………………んふふっ」
「待って、アリス怖いし」