そして何日かのちに、利害の一致から、ランダーはソニアの家出の片棒をかつぎ、二人で旅に出るはめになった。
 ソニアの歳が、実際いくつなのかランダーは判断しかねていた。外見はどう見ても十五、六くらいに思えるのだが、話を聞いていると、もっと年上だという印象をうける。いままで何度となく歳を尋ねようかと思ったが、なんとなくききそびれていた。
 ランダーは頭を一振りして、そんな思いを振り払った。約束さえ果たせばいいのだ。彼女の歳などどうでもいい。
 ソニアを無事にユース城邑に送り届ける――それがソニアの手引きで、ランダーがカディス城邑から逃げ出した時の約束だった。ソニアがユース城邑を目指すわけさえ、ランダーは知らなかった。また、知りたいとも思わなかった。他人と深くかかわるのはあまり得意な方ではない。
 一方、ソニアの方は好奇心旺盛な性格だった。それは、ベルー族にしては珍しく、ソニアが、生まれ育ったカディス城邑から出たことがなかったせいかもしれない。
 彼女はランダーが収容所にいた訳や、カスタ城邑での生活、生い立ちにいたるまで知りたがった。ランダーも請われるままに、たいていの事は話した。が、たった一つ、故郷の事だけは何度聞かれても言葉をにごし、語ることはなかった。故郷の記憶は、ランダーにとっては悪夢のようなものだった。