箱舟はゆっくりと波に揺られ、湖の中央に向かって流れていった。やがて、湖の中ほどにたどりつくと、ふいに湖水がうねり、箱舟は両脇から波に包み込まれるかのように、ゆっくりと沈んでいった。
ジェイクは肩を落としながら、振りかえった。
「これでやっと、娘は安らかに眠れるのかい?」
彼はソニアにきいた。
「ええ、きっとね」
それから四人は、湖に近い場所に桜の苗木を植えた。これから、ジェイクとサイラにとって、この木がアマナの墓標となるのだ。
全てが終わると、ソニアは七弦琴を取り出した。彼女は緑の草の上に座り、和音を三度かきならしてから歌い出した。
荘厳な旋律の、ベルー族の鎮魂の歌だった。ソニアの声は風に乗り湖畔に響き渡った。
透き通るような声――
魔法の声だとランダーは思った。
ジェイクとサイラは厳粛な面持ちで頭をたれていた。
少し離れた白樺の枝の上で、山鳥が声を合わせるようにさえずっている。
やがてソニアの歌が止んだ。
驚いたことに、苗木の幹はすっかり曲がっていた。二本の大枝は水平に広がり、枝先は――このまま木が大きくなっていくとすれば――水面にまで届くことだろう。ちょうどほっそりとした乙女が優しく腕を差し伸べるように。
ランダーはそんな若木など見た事がなかった。樹木というものはまっすぐに空に向かって枝を伸ばすものだ。しかし、それはやはり桜の木だった。
「細かい事、気にしないの」
ソニアはいたずらっぽく片目をつぶってみせた。
ジェイクは肩を落としながら、振りかえった。
「これでやっと、娘は安らかに眠れるのかい?」
彼はソニアにきいた。
「ええ、きっとね」
それから四人は、湖に近い場所に桜の苗木を植えた。これから、ジェイクとサイラにとって、この木がアマナの墓標となるのだ。
全てが終わると、ソニアは七弦琴を取り出した。彼女は緑の草の上に座り、和音を三度かきならしてから歌い出した。
荘厳な旋律の、ベルー族の鎮魂の歌だった。ソニアの声は風に乗り湖畔に響き渡った。
透き通るような声――
魔法の声だとランダーは思った。
ジェイクとサイラは厳粛な面持ちで頭をたれていた。
少し離れた白樺の枝の上で、山鳥が声を合わせるようにさえずっている。
やがてソニアの歌が止んだ。
驚いたことに、苗木の幹はすっかり曲がっていた。二本の大枝は水平に広がり、枝先は――このまま木が大きくなっていくとすれば――水面にまで届くことだろう。ちょうどほっそりとした乙女が優しく腕を差し伸べるように。
ランダーはそんな若木など見た事がなかった。樹木というものはまっすぐに空に向かって枝を伸ばすものだ。しかし、それはやはり桜の木だった。
「細かい事、気にしないの」
ソニアはいたずらっぽく片目をつぶってみせた。

