「あんた達、いったいどういうつもりだ?」
 ジェイクは語気荒く少女に言った。
 少女はわずかに顔を傾け、馬上からジェイクを見下ろした。その姿に朝の無邪気な少女の表情はなく、女王のごとき威厳さえ感じられ、ジェイクはたじろいだ。
「すべての間違いを正すために戻ってきたのよ」
 少女が言った。
 店の入り口で様子をうかがっていた男達がざわめいた。
 裏手から赤毛の男が悠々と歩いてくる。
 男は馬の横までやってくると、ジェイクに向かって言った。
「主(あるじ)、魔物退治をはじめるぞ」
 農夫達の間から、わっと歓声があがった。
 目の前に立つ長剣をたずさえた若者は、いかにも強そうで、伝説の竜さえも倒してしまえるように見えた。
 赤毛の男は、黒い馬のあぶみに足をかけ、少女の後ろに飛び乗った。そして、手綱を握ると、丘の上の寺院に向かって坂道を駆け上がって行ったのだった。
 農夫達は、その後を追うようにして寺院へと急いだ。