山間の街道を、二頭の馬が北に向かって進んでいた。
 一頭はまじりっけなしの純白の馬で、白いベールをなびかせたベルー族の少女が乗っていた。
 少女は、ベルー族特有の浅黒い肌をしており、くっきりとした眉と生き生きとした黒い瞳の持ち主だった。まっすぐな黒い髪は、多すぎるといってもよいほど豊かだ。すんなりした手首には黄金の装身具が鈴のような音をたててゆれている。
 もう片方は、夜のような漆黒の馬。
 乗り手は彫りの深い顔立ちをした赤毛の若い男だった。ぴったりとした革の長靴(ちょうか)をはき、腰の左側に長剣を下げているほかは、これといって目立つような服装でもなかったが、見るからに屈強な体つきと頬に残る白い刀傷が、彼の穏やかならぬ人生を示していた。
 夜は明けたばかりだった。