そして―― 



あの人もまた、読んでいた本を閉じて、ガサガサと荷物の整理を始めた。 



どうやら、もうすぐ降りるらしい。 



電車が駅に滑り込むと同時に、彼も立ち上がった。 


目の前に立った彼は、私よりも、ずっと背が高くて…… 



スローモーションのように、ゆっくりと、爪先から見上げてしまった。



ドアが開き、皆が流れるように降りる中、 



私もその流れに逆らわず、彼の後を追っていた。