ある移動教室のとき、彰吾と共に教室を出た。 くだらない話をしながら階段を下りた。 そこで階段を上がってくる東野優里が見えた。 あの綺麗な黒髪を揺らしてテンポよく階段を歩いている。 「でさーあいつがー」 しゃべることさえもできなくなるほど、見惚れていた。 彰吾はいつも一人でしゃべっているから平気だ。 東野が横を通り過ぎる。 ふわっ、と彼女の甘い匂いが鼻をくすぐる。 「東野・・・・・・」 誰にも聞こえない声で俺は呟いた。