■■■暗闇■■■
アルミや金属を同じ金属でできた機械で削り、悲鳴にも似たような音が、
日常に聞こえる川崎の工業地帯で僕は生まれた。

こんなエリアは、昼間のやるせない空気とは違い、夜は工場のオレンジ色の安全灯が
静かな光で街を照らしてくれる。

川崎の工業地帯は休むことなく静かに流れていく川が点在している。
だけど、水が流れる音が聞こえない、本当にゆっくり静かに流れていく。

川は、ペットボトルや新聞紙がプカプカと浮いていて廃棄物で汚れている。
こんな川でも、夜になれば見えなくてもいいところが見えなくなり、汚いものを隠しく
れている。

まるで僕の人生のように。

工場群のオレンジ色の光は、こんな汚れた夜の川に反射して
キラキラして、別な場所に変化させるチカラを持っている。

黒色の暗闇は、何も見えないけど、少しだけそんな光があって、
その光は、対象物にプロポーションを存在させて、
そこに生きている、在る、そこに、ここに「いる」証明を与える。

だから、僕らは当たり前のように、光を感じて、
いじって、使って。点いたり、消したり。

生きている証として、ヒカリに触れ合っている。

すべてのものが白日のもと見えるのは、ほんとうにつまらない。
暗闇で、黒で、深いクロで覆われていたほうが、なんでも綺麗に見えるのかもしれな
い。

ヒカリがないところに、人が見えてくる。
ヒカリがないところに、自分が見えてくる。

動物のなかでも、寂しさや孤独を強く感じる生き物は、「人間」なんじゃないだろう
か?


だから、僕は、人間を止めることから始めてみる。