苺花(イチカ)

「…花ちゃん?どしたですか?」


そう言って、沙雪ちゃんは私の顔を覗き込んでくる。
私は慌てて身を引いた。

「あ…ううん。同じ列車で会って、来たところも行く場所も一緒なんて…なんだか『運命』みたいだなって…」


「…『運命』…」



『運命』という言葉に、沙雪ちゃんは少し戸惑っているようだった。


「ごめんね。…変なこと言っちゃって」


「いいえ…。」


生返事だったのが気になって隣をうかがうと、沙雪ちゃんは腕組みをして考えこむようにしていた。



「さ、沙雪ちゃん?」


「…そうです」


「え?」

私が問い返すよりも先に、沙雪ちゃんは今にも飛びつきそうな勢いで言った。


「そうだったのです!『うんめい』です!!」

「??」

どういうこと?



「沙雪もずっと考えてたんですよ。花ちゃんと出会ったこと、うまく表せる言葉がないかな〜って」

「そしたら今、花ちゃんが言ってくれて…。同じこと考えてたんですね、沙雪たち…」


私は沙雪ちゃんの言葉をただ黙って聞いていた。

まるで語りかけるように、沙雪ちゃんは言う。


「ねえ花ちゃん。沙雪たち、こんな山奥の、しかも列車の中で出会えたんですよ。それだけで、もう素敵じゃないですか?」


「そうだね…」
…せっかくこうして出会えたんだもん。

私はぺこりと頭を下げた。

「よろしくね、沙雪ちゃん」

「はいです!」


沙雪ちゃんが笑うのにつられて、私も笑った。