授業中、私のノートの切れ端に書かれた広瀬君の少し下手な文字は、あまりにも残酷な現実を私に突きつけてきた。
「俺、好きな人ができた」
へえ、だあれ?と嫌に速くなる鼓動を落ち着かせ、震える右手で文字を並べる。「誰だと思う?」もったいぶらないで。余計苦しくなるじゃない。
教えてよ、と書くと彼の癖であるペン回しがぴたりと止まる。そしてさらさらとまた文字が書かれた。「隣のクラスの奴」……私の自慢のポーカーフェイスが崩れそうになった。