そこに佇んでいたのは、昨日街中で魔物を殺していた隻眼のモンク(格闘術士)だったのだ。

「貴様は、キラー・アイ……名はルティナと言ったか」

「ふん、あたしのことを知っているのか。その呼び名も有名になったもんだね」

ルティナと呼ばれたモンクは平らな大きめの白い箱を小脇に抱え、白い何かを口に入れながら現れたのである。

先程レグの背後から饅頭を投げ付けてきたのは、恐らくこのルティナなのだろう。黒い餡が口元に付いているので間違いはない。

「昨日の騒ぎを見ていたからな。それに俺たちの間では、貴様を知らない者などいない」

「……成る程な」

ルティナは眼光を宿しながら、口端に付いていた餡を親指で拭うと、ペロリと舌先で舐めた。

「なら容赦はしないよ。かかってきな!」

彼女は視線を彼らのほうへ向けたままで、持っていた箱を素早くこちらに投げ付けてきた。私は突然のことだったので吃驚して、反射的に受け取ってしまう。

開いているその中を覗くと、先程と同じ白い饅頭が6個入っていた。

「この箱〜仕切りが36個分ありますね〜」

エドも私の背後から覗き込んでいる。

36個入りの箱の中で、残っているのが6個。ということはあの女性が一人で、30個も食べたということか。

(あ、30個じゃなくて29個だ。さっき投げた物もあるから)

私は足元に落ちている饅頭を見ながら思う。