「これだけ人が多いと、探しようがないわね」

「中へ無理矢理〜突っ込んで行きますか〜?」

「いや、それは止めておくわ」

私は即座にその提案を棄却した。この人混みの中でまた、酔いたくはない。

「取り敢えず、この建物の周りでも一周してみる? もしかしたら中には入っていなくて、外に出ているかもしれないし」

エドが私の提案に軽く賛成すると、私たちは建物の裏手へと回ってみた。

流石に裏の方は正面よりも薄暗かった。日が落ち始めているので、点灯係の精霊術士が疎らにある街灯へ、明かりを灯しに来ていた。

正面よりは人数が減っているようだが、それでも人影は途切れることがなかった。

私たちが辺りを見回しながら丁度角を曲がった時。

「えー? 水の社から来たんですかー?」

「はっはっはっ、そうとも。なんと俺は、水の精霊ウンディーネの加護を受けた英雄なのだ!」

「まぁ、すっごぉーい!!」

「超イケてるぅー」

「英雄だなんて、メチャメチャカッコ良すぎですぅ」

私と同年代くらいの女の子たち十人程が何かを取り囲み、賑やかな声で騒いでいる。私はそっと建物の陰に隠れた。