「そうだな……確かに貴様を殺すのは簡単だ。
外へ引きずり出すだけでも、簡単に滅せられるからな。
が、それでも殺さずにいるのは、まだ利用価値がある。それだけのことだ」

「そのためだけに『精霊に選ばれし者』に、あの術を刻んだのか?」

「ふ…まさか。
奴らで試したことがないのに、術効果の有無など、確証がないではないか」

もし言い伝え通りであるのなら、魔物である自分たちの術は『精霊に選ばれし者』には効かないはずだった。

その話はサラも知っている。

「だが妾の思った通り『精霊力を使用しない』術ならば、効果が現れた。
だからこそ、貴様を捕獲することにも役立ってくれたのだ」

(……やはり、考えることは同じか)

魔族が術発動をするには体内と大気、ヒトの場合では大気の精霊力と精霊石を、それぞれ使用する。

精神エネルギーと精霊力を使用するという点では両者ともに差違はないが、違いがあるとするならば、精霊石を介するか否かだけだ。

つまり『精霊石』を使用するのがヒト、使用しないのが魔族という認識である。それで『精霊の加護』の反応が違ってくるのだ。

だが何れの場合でも術を放出する際には、精霊力を使用する。

そこに『精霊力』が含まれてさえいれば、『精霊の加護』が何らかの反応を示す。

しかし最初からそこに『精霊力』そのものが含まれていなかったとしたら、どうだろうか。