ゼロクエスト ~第2部 異なる者

「うむ、当然であろう。魔王を討伐に行くのだ。
その晴れ舞台でこの剣を使わずして、一体誰が真の英雄と呼べるだろうか」

アレックスは腰へ納めた剣柄に手を触れながら、いつもの如く得意げに胸を張っていた。

「しかも宝物庫の鍵も親父……村長の家から盗んでいっただろ」

「盗んだとは失敬なッ。
確かに誰にも告げずにコッソリと拝借はしたが、それはほんの一時だけのことだ。
後でコッソリと元の場所へと、戻しておいたではないか!」

(それを盗んだと言うのよ。それに「コッソリ」と言っているわりには、既にディーンにはバレてんじゃない)

そうツッコミたい気分ではあったが、そんなことでいちいちツッコんでいたら、アレックスとは付き合えない。

「まあ……俺もその程度のことでお前を責めるつもりはないさ。ただ、な」

ディーンは険しい顔付きで上を向くと、顎に手を置き、口を真一文字に結んだ。

「? どうしたというのだ。
村で何かあったのか??」

アレックスも釣られて険しい表情に変わると、首を傾げながらディーンを見詰めた。

どうやら、彼のただならぬ様子に気付いたらしい。

「その状態の剣を見たらリアの奴、どんな行動に出るのかなと、思ってさ」



ゴトリ。



鈍い音が床一面に響いていた。

アレックスが吟味中の品物を、足下に落としたのだ。

彼は目を見開き、呆然とディーンの顔を食い入るように見詰めている。

それを落としたことにも気付かない様子で、身体を硬直させたままである。

後方から
「お客さん、店の売り物を粗末に扱わないでくれよ!」
と強い口調で咎めてきた店主の声さえも、その耳には届いていないようだ。