「俺は魔王を倒すべく、今以上に力をつけなければならない。
故に日頃から行っている修行方法を、大幅に改善する必要があるのだ!
俺はこの数日間、昼夜問わず、そのことばかりを考え続けていた。
その矢先でのルティナの行動。高所からの着地力。
これを日頃の鍛錬に取り入れられないだろうか。
そのことを真っ先に思い付いた俺は、『打倒・魔王』へと新たなる一歩を踏み出すべく、自ら実行を開始することにしたのだッ!!!」



――あー、また訳の分からないことを……。



モンスター・ミスト内での、あの弱気なアレックスは一体何処へ消えてしまったのだろうか。

無数に瞬かせる星々の如く、周囲に光を撒き散らしている彼の上気した顔を眺めながら、私は完全に呆れ返っていた。

妙な脱力感とガッカリ感が、一気に全身へ襲いかかってくる。



「……エド、アレックスの好きなようにさせてあげたら?」

「! そんなっ!?
エリスさんは〜冷たすぎです〜。
我らがリーダーのアレックスさんが〜怪我をなされでもしたら〜一体どうするおつもりですか〜」

「ッ、我らがリーダーって……」

「お前たち、騒がしいぞ!」

その声とともに、入り口の扉が勢いよく開け放たれた。

そこに居るのは、外で見張っていた騎士様二人。

恐らくエドの高音が、外へも響いてしまったのだろう。

「ん? おい、一人足りないんじゃないのか」

私たちを一通り見回していた騎士様の一人が、どうやら早速ソレに気付いてしまったようだ。