「あの男のことだが……やはり本当なのか?」

「……ええ、確かよ。間違いないわ」

「エリスさんたち〜何の話をしているのですか〜?」

「話なら、俺も聞くぞ」

私とルティナが小声で話していると、いきなり背後から二人が覗き込んできた。

「もしかして〜僕たちに聞かれてはまずい〜話なのでしょうか〜?」


鋭い! 流石は芸術士だ!!


などと感心している場合ではなかった。

私は二人のほうを振り向くと、とびきりの笑顔を浮かべて見せた。

「いや、ええっと……そ、そそんなことないわよ……あ、いや、だから……ッ!
そうっ!!
これから私たち二人、ガールズトークをするつもりなのよね。
だからあんたたちのような無粋な男が、途中で割り込んでくるのはどうかと思うの」

「がー……何だソレは??」

アレックスが眉を顰めながら訊き返してきた。

笑顔で誤魔化そうとしても、やはりこの言い訳は苦しかったか。

しかし。

「それは大変〜失礼致しました〜。
そんなこととは露知らず〜僕たちはお二人に〜野暮な真似をしようとしていたのですね〜」

エドは頭を下げて謝ると、戸惑ったままのアレックスを促し、あっさりと私たちから離れていった。

彼は見かけによらず、わりと紳士なのかもしれない。

「取り敢えずこれで、何とか落ち着いて話ができるわね」

彼らを追い払うことに成功した私は、額に滲んでいた汗を拭いながら、安堵の溜息を一つ吐いた。

「何なんだあんた、その無茶苦茶な理由は」

何故かは分からなかったが、ルティナが半眼でこちらを睨んでいる。